ある日、ある朝
   (香西とディーオ)


首都のとある小さな建物。
教会も図書館も近いが、大通りからは少し離れていて静かな一角。

朝早くガチャガチャもそもそと音を立てながら帰ってきたのは、まだ若いモンクで。
朝食のパンの入った籠をテーブルに乗せながらその姿を確認すると、この建物の主であるプリーストはため息をついた。
「お帰り、ディー。随分早いというか遅いというか……ナンダソレ」
どん、と置かれた大きな袋の中身が音の正体だったらしい。
昨日の昼間に出かけていったディーオは、よく言う朝帰りというもの。
「狩りは24時前に終ったんだけどさ、アマツ行ったらタダ酒っていうんだもん」
「…飲んだのか;」
「違う、飲まされたのっ!」

どうやら桜宴会を覗きに行って、丁度観光協会のタダ酒が振舞われたらしい。
まだ未成年のディーオは酒に対する耐性もあるわけがなく、かといって、周りがみんな酔っ払ったテンションの中に入り込んでシラフで戻れるはずもなく。

「気が付いたら宿屋のベッドの上だったんだよ…」
バツが悪いのか目を合わすことなく、袋の中身をテーブルへと開けていく。
「どんだけ飲んだんだ…;」
さすがに1・2杯で気を失うとは思えない。まだほのかに臭いがするあたり、結構飲んできたと思われた。
だって仕方がないじゃないか、と言いたげに頬を膨らませて。その姿に説教する気もすっかり失せた。
「で、この…緑ハーブの山は何?」
もさりと袋からはみ出した緑色の薬草。青りんご(香西のペットのポポリン)がいたら、中にダイブしただろうなという量が詰っている。
「そろそろ亀地上行ってみなって言われたからさ。行ってみたらウサギがいっぱいいて…カサイ兄が使うって聞いたから持って帰ってきた」
「ラクダとまだ格闘してんのかあいつは;」
出されたものを見れば、トンボの羽やらブリガンやら。いくつか混じった小瓶をなんとなしに持ち上げてみる。
「あぁ、それはアンティ…なんだっけ、痛み止め。香兄使う?」
「アンティペインメント、な。なんでオレが使うんだよ」
支援プリが普段使うような代物じゃない。応急手当用に1つ置いておいてもいいかなとは思うが、使う相手は突っ込み癖のある前衛に限られそうだ。
「香兄、突っ込むから」
「…いらんっ」
否定できないのがまた痛い。
確かに昔から敵に突っ込む癖が抜けず、あっという間にボロボロの姿で戻ることも多いが、アコ時代のGH事件あたりからみれば大分大人しくなったはず…と思う。
黒い猫耳が後ろにぺたりと下がり、渋い顔をしたのをにやにやしながら見てたディーオの額を小突き、小さくため息をついて小瓶をしまわせた。

そこでふと
「ディー……朝食の前に風呂」
「なんで? オレ腹ペコなんだけどっ」
「虫と獣クサイ」
「狽ヲ」
くんくんと自分の服の臭いを嗅ぎつつ、よく見てみれば服もドロだらけ。
「綺麗になるまで朝食なしだから」
ぐぎゅーという音を聞かない振りをして、香西は風呂を指差した。
「…帰宅後の香兄よりは臭くないと思うんだけど…」
「失礼な。オレは帰宅すると即風呂だ」
2度目のデコピン。
もっぱら屍人を退治してる香西やカルマは、帰宅すると独特の腐臭を纏っている時がある。
本人は気付かないことが多いが、結構コレがきついらしい。
「ううう…ワカリマシタ」
だるそうに立ち上がると、恨めしそうな視線を香西へ向け、しぶしぶと風呂へと向かうディーオだった。

「…近々抜かれるな、レベル」
初めて会った時は60以上の差が付いていたレベルも、もう1つくらいだろうか。
昨日最後に会った時よりも少し上がってるように見えた。
父親ってこんな気持ちなのだろうか、なんて似合わないことを考えながら、尻尾を機嫌良さそうに揺らして朝食準備の続きに取り掛かった。



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あとがきっぽいもの?

2ndである支援プリを間もなく11番PCなモンクが抜きそうだったので思いつきで書きました(爆
ディーオはハンタのハスキーと一緒に田舎から出てきたばかりのときに、首都で迷子だったのを教会で保護、そのまま香西の家(借家(笑)にやっかいになっているので、下宿というか……モンクを目指してアコとして教会に入った時点で香西の後輩にもなるので、先輩=家主=保護者という頭が上がらない状態ですb
香西も弟のように見ている節があるので、会話はこんな感じで軽めです。
低血圧な香西がこの時間に起きていたのは、朝の礼拝の当番だったから(ぁ
ちなみにディーオの呼び方は「カサイ兄」→「かさいにぃ」・「香兄」→「こーにぃ」です(細かい


2008/4/2